shy at first

WETNAP

Clean

部屋の掃除をした。

12個のライターと、数えるのも嫌になるくらいの小銭が発掘された。

 置物になっていた衣装ケースに入ったTシャツは、久しぶりの友達にでも会ったような感覚。元気にしてたんだと再会を喜び、袖を通して抱き合った。少し太ったんじゃないか?と言われているようで、居心地が悪かった。

  電球が切れて、ずっと暗いままの風呂場。いたるところに、広がっている汚れは、薄暗いせいなのか、私の性格のせいなのか、あまり気にならないでいた。ドラッグストアで1年に数回買うパワー系の浴槽洗剤は、目が開けていられないほど強いガスを発生させていた。

 トイレットペーパーの芯が保管されている便所には、擦らなくても落ちると書かれた洗剤を。何かの呪いの結果こうなったと言われても、信じてしまうくらいのおどろおどろしい汚れには、現在の科学ではまだ勝てないらしかった。

 アパートのゴミ置き場に、5回は行った。洗濯機は、3回まわした。乾燥機にかけた洋服たちを、ハンガーに掛けたり、丁寧に畳んでケースに入れてみたりする。みんな、こんな時間が掛かる事を、生活の中にねじ込んでいるのか、なぜ私は出来ないんだと、人生で何度思ったかも分からない悩み。ある程度は住める環境、ギリギリ笑えるくらいの状況になったので、煙草を吸う。このタイミングは、さぞおいしかろうと期待して、火を付けるも、鼻の奥に残る塩素の匂いのせいで、煙草も不味い。

 浴槽にお湯をためて、湯船に浸かってみようかなと考えるも、今日1日くらいは掃除したばっかりのピカピカキレイなままにしておこう、しといてあげようと思い、いまは痒い足の裏を反対側の足で掻いている。

 まだまだ片付けなくちゃいけない事が、たくさんある(気がしている)。